「貴様を殺したところで、何も帰ってはこない。だがもはや……滅びた王国を弔えるものは、そなたらの命くらいしか残されておらぬ!」
「お、御嬢様の命だけは!」
「邪魔だっ! どけっ」

 周りの兵士が侍女を拘束した。
 一人になった紙安の前に、一歩一歩ルキスが歩み寄る。
 まるで、彼らが抱いた苦痛を思い知らせるように。

 紙安は知らなかった。
 バッドエンドの果てにこんな結末が待ち受けていたなんて、全く知らなかったのだ。

「い、いやっ……」

 彼女は尻餅をつくと、ずりずりと後ろに下がる。
 しかしルキスはそんな彼女のドレスの裾を踏みつけにし、その場に縫い留めた。
 白刃がゆっくりと振り上げられる。

「我が王国への手向けとなれっ!」
「あ――――」

 重たい金属の塊が身体を斜めに通り抜け、紙安の視界が赤く染まった。