逃れようとした紙安を、リューグが抑え込む。
 額に指を添えられると、視界を黒い靄が覆い、意識が遠くなっていく。
 他者を強制的に昏倒させる晶還術。

(くっ……!)

 気付いて解除を試みるも、実力の差が圧倒的過ぎる。
 数秒も保てず、紙安の意識は闇に落ちた。

「すまない……」

 だが、最後にかすかに気遣わし気な謝罪が呟かれ、それは紙安の耳にずっと残った。