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 その後数か月――平穏な日々を送る紙安。
 あれ以来、身体がいうことを聞かないようなこともない。
 
 でも……徐々にこの先に不安が募り、彼女はは何度もロゼに事情を話そうとした。

 しかしそうすれば、想いはどうあれロゼは王国を守る為リューグと対立する。
 そうなった時、自分がリューグの隣に立てば、この国の全ての人間を敵に回すことになる。考えると、怖くて決断できなかった。
 ルキスや他の攻略対象者たちにも声は掛けられず、時間は無駄に過ぎてゆく。

 そしてある日、憔悴した紙安はリューグにあの事を直接聞いてしまった。

「お兄様は……とても恐ろしいことをなさろうとしているのですよね」

 ベッドで半身を起こし、紙安は枕元に寄りそっていたリューグにぼそりとこぼす。

「……いきなりどうしたんだ? 悪い夢でも見たのか?」

 表情に変化はないが、リューグは自分の首筋の後ろに手をやった。
 これは彼の癖。思いがけないことがあった時にする仕草だ。