「あの、お兄様、疲れていませんか? 今日は少しお休みされてはいかがでしょう」

 せめてひと時の安らぎをと、紙安は勇気を出して膝の上を叩いた。
 こんなこと、誰にもしたことは無いけれど。
 今日は自分の方がリューグをゆっくり眠らせてあげたい。

「いいのか? 別にそこまで疲れているわけではないんだが……」

 彼は自分が尽くされる方には慣れていない感じだ。
 けれど少々申し訳なさそうな顔で、戸惑いがちに頭を乗せてくれた。
 こうすると、丁度お互いの顔がよく見え、二人とも笑顔になる。

「うん、悪くない。日差しもいいし、温かくてよく眠れそうだ」
「しばらくこうしていましょう」

 紙安は初めてリューグの髪に手を触れた。
 彼は最初くすぐったそうにしたけれど、すぐにそれを受け入れ目を閉じる。

 自然の穏やかな空気に囲まれながら、紙安も身体の力を抜く。
 心なしか瞳が潤む。

(知らなかった。大好きな人に何かしてあげることで、こんなにも満たされた気持ちになんて……)