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 リューグ・アロウマークの生活は多忙だ。
 紙安は彼が自分より遅く起きてくるのを見たことが無い。
 酷い場合だと夜更けに緊急の使者が来てそのまま数日城から帰ってこないこともある。

 しかし、暇さえあれば疲れた素振りも見せず、妹と行動を共にしてくれる。
 今もこうして彼は、庭のベンチで紙安のおしゃべりに付き合ってくれていた。

「どうだ、学校生活は順調か?」
「もちろんです。晶還術の練習だって、友達がいるから上達も早いですし。でもロゼったら、私の背が小さいから、大きくなれって何でも食べさせようとするんですよ。私……そんなにちんちくりんかしら」
「はっはっは、いい友達じゃないか。お前は確かに昔から少し成長が遅いし痩せ気味だから、栄養はしっかり取らないといけないぞ。しかし、元気になったな。お前がそうして明るい顔を見せてくれて何よりだ」

 リューグは細くした目で紙安を見つめ、その大きな掌で紙安の頭を包み込む。
 こうされていると、紙安は何も言えなくなる。
 触れられているだけで幸せ。
 だけど、どこか切ない気持ちも胸に溢れてどうしようもなくなってしまうのだ。

(何か、してあげたい……)

 彼だって少ない時間をやりくりしてこうして一緒に居てくれている。
 ならばたとえ本当の妹ではなくても、紙安からもリューグに与えられるものがあれば。