(リューグが、死んでしまう……)

 ここに来て始めて知った。リューグが、妹を溺愛していることを。
 作中では、ほとんど二人の関係は語られていなかった。

 にもかかわらず、彼は忙しい合間を縫って顔を見せ、困ったことはないか尋ねてくれる。心細そうにしていたら、抱き締めて眠るまで手を繋いでくれる。
 もはや推しだという次元を越えて、紙安の中にはリューグに対する特別な愛情が芽生えていた。

(どうしたら……)

 もはや紙安の頭はリューグの事で一杯だ。
 窓の外が曇り空から闇に変わっても、紙安は自分がどうした選択をすべきなのか必死に自問自答する。

 そうしていると、揺らぐ蠟燭の火に浮かぶのは彼の表情ばかりなのだった。