それはこの夢でもきっと同じで、なんらかの強制力が働くはずだ。
 受け入れざるを得ない。
 そう思っていたのに、そんなものは何も起きなかった。

 本来取り巻きとなるはずの少女たちがすり寄って来る気配も無く……。
 彼女らは他の少女のグループに入り、孤立するはずのロゼが紙安と行動を共にし始めたというわけだ。

 それでいいのかという思いはあった。
 けれど対人関係に耐性の薄い紙安は、ロゼが寄せてくる好意に逆らえなかった。
 なのでなし崩しにこうして友達関係が築かれ……。
 今では名前を気安く呼び合う中となってしまった。

 優しい兄に、親切で可愛い友達。
 これといって目立ったトラブルも起きず、紙安は学園生活を問題なく楽しんでいる。

 そう、楽しめている。

(これでいいのかなぁ……???)

 これまでのパッとしない人生が比較対象なのだ。不幸が無いとどうしても不自然に思えてしまう。そんな疑り深い自分にうんざりしつつもぐもぐとパスタを咀嚼していると、ロゼが首を傾けた。