――ほらおいで。何があっても大丈夫だよ、俺がいるから。

 心配性のあたしを兄は、その大きな体でいつも包み込んでくれていた。

 家族以外には見せない慈しみ深い表情。
 命と引き換えにしても失いたくない人。

 でもこの幸せは続かない。
 あたしも知らない悲しい過去が、彼の未来を閉ざしているから。

 だからあたしは全てを捨てて、賭けに出る。
 どこかにある他の世界の、まだ見ぬ誰かを巻き込んで――。