奏斗くんと付き合って1ヶ月が経った。
慣れないことばっかりだけど、充実した毎日を送っている。

初めて自分の家に帰ったとき、叔父さんのお嫁さん…私のお母さんに会った。
とても優しくて、ずっと前から私のお母さんだったと思うくらい違和感がなかった。

私みたいに、すぐ寝ちゃうところが猫っぽい。


私は中学2年生で、中学校に通っている。
勉強についていけるのか心配だったけど、なぜか勉強はできるほうみたいで、今のところ困ったことはない。
お箸の使い方は特訓中。
友達もいて、毎日が楽しい。


毎日が夢みたいな生活。
というか、猫だった頃の方が今は夢だったみたい。








放課後の空いてる日と、休みの日は欠かさず奏斗くんに会う。
前みたいに、ずっと一緒にいられないのはすごく寂しいけど、奏斗くんと話ができる今の方が幸せ。


「奏斗くん、お勉強教えて」
今日も奏斗くんのお家に遊びに来ている。
一緒にお出かけすることもあるけど、やっぱりこの部屋が1番落ち着く。

「えー、ミヤのが勉強分かるじゃん。それより箸の使い方、覚えないと。まだ少し持ち方が不安定でしょ」

「じゃあお箸の使い方教えて」


お箸を持ってきた奏斗くんの膝にぴょこんと乗る。
心地よくて、思わず丸くなって寝たくなる。

「まずは、はい。お箸持って」
私にお箸を渡す奏斗くん。
私は渡されたお箸を一旦テーブルにおいて、奏斗くんの手を握った。

「えへへ、奏斗くんの手」

奏斗くんの手を握りしめられることが嬉しい。

「なんだよー」
奏斗くんは照れている。

このまま手を握っていようかと思っていたら、急に目の前が暗くなって、唇に柔らかいものが触った。



後ろから抱きしめられている体勢だから、奏斗くんの表情は分からない。