真顔で近づいてくる彼は、殺気を向けられるより怖いと感じる。
後ずさって一定の距離を保つけど、背中にひんやりとした壁に当たってしまう。
「やだ…来ないで…っ!」
「怯えちゃって可愛いね」
背中に壁が当たった隙を見逃さず一気に詰め寄る泉海斗。
顎を掴まれ、無理やり視線を合わせられる。
「…っ」
こういう時はどうすれば…っ!
頭の中にある護身術を試した。
けど、嫌でも自分が非力なのだとわかってしまうほど、力は圧倒的で振りほどけなかった。
「やっとあいつの大切な物を壊せる」
視線があっているはずなのに、冷たい瞳は私を見ていなくてボソッと呟いた。
その言葉に、彼が言っていたことを思い出す。
“島崎理王は殺す”
彼が執着しているのは“私”ではなくて、理王が気に入っている“女”だから。


