子兎さんは俺様総長のお気に入り



幸いなのは、拘束されずに閉じ込められているだけなこと。



麻衣だけでも逃げることができれば…。


周りをもう一度見るけど、脱出は難しそう。

窓があるけどとても人が出れるような大きなものではないし、鉄格子がかけられていて人が出入出来たとしても不可能。




「ああ、2人とも起きたんだ?」



「麻衣まで巻き込んで何のつもり?
この子に手を出したら許さないから…っ」



扉から現れたのは、相変わらず何を考えているか分からない冷たい瞳を持つ泉海斗。


麻衣を庇うように前へ出て、精一杯睨みつける。



「やだなあ。そんなに睨んじゃって。
あなたが俺の言う通りにすればその子には何もしない」




「何をすればいいの?」




「さすが子兎さん。話がわかるね」




何が目的かはわからないけど、これ以上危害を加えられないならやるしかない。


覚悟を決めると後ろからギュッと腕を掴まれる。




「うさぎ、危険だよ!
無茶ばかりしないでよ」



「今、俺は子兎さんと話してる。外野は黙ってくれる?」




「…っ」




私が、初めて彼に会った時と同じように麻衣に殺気を向ける。

足に力が入らなくなってしまい、麻衣はペタンとその場に座り込んでしまった。



普通の女の子が、いきなり殺気を向けられたら怖いに決まってる。
私も…あの時はほんとに怖くて今でもなんであの時走れたのかが不思議。