「今日はこれで終わりだから、先に帰ってるね。部活、もうすこしがんばって」


「う、うん…!」




 ぎゅう、と抱きしめられて、ひかえめに唯央くんのシャツをつかんだ。

 さすがにあんなことがあったあとで、思いっきりくっつくことはできない。

 それなのに、唯央くんはチュッと私のほおにキスをした。




「それじゃ、家で待ってるね」




 やわらかく細められた目が私を見つめる。

 元気いっぱいないつもの笑顔とは違う、落ちついたほほえみに胸がドキッとした。


 唯央くんに、思いっきり抱きつきたい…。

 でも、私はその気持ちをグッと胸にしまいこんで、「うん」と笑顔を返した。