「応援ありがとー!みんなのおかげで勝てたよ!」
「「きゃ~!」」
ニッコリ笑顔に、手をふり返したい気持ちだった。
ううん、この場で駆け寄って抱きつきたいくらい。
でもその気持ちは抑えて、その後の男女混合リレーも、教室にもどったあとの挨拶も、素知らぬ顔でやり過ごす。
撮影スタッフも引いて、自由になった放課後。
まっすぐ空き教室に向かうと、もう唯央くんと奏輝先輩は向かい合っていた。
「あ、帆風ちゃん。待ってたよ」
「唯央くん!と、奏輝先輩…」
「…自信があったのに、負けた。おまえ、心の折り方わかってるね」
「あきらめてもらわないとこまるからな。さ、消してもらおうか?」
バチバチと音がしそうな視線を交わして、唯央くんは奏輝先輩のスマホを差し出す。
奏輝先輩は目を細めてスマホを受け取ると、トッ、トッ、トッと画面をタップして唯央くんに突き返した。



