「だれが見るか。まぁ、僕は紳士だから、決着がつくまでこのスマホはここに置いておいてあげるよ」


「ははっ、紳士なら女の子を強奪(ごうだつ)なんてしないだろ」




 奏輝先輩は窓ぎわまで歩いて行って、スマホを机のなかに入れる。

 いちばんまえ、角の席。


 唯央くんの腕のなかで、先輩を警戒するように見つめていると、扉までもどって来た奏輝先輩は、横目に私を見た。




「“答え”なのかと思ったよ。おまえのことだから、スマホを見てないとかだろうけど。その不用心さ、やっぱり僕がついてたほうがいいんじゃない?」


「え…?」


「口説くのがへただな、あんた」


「おまえには言ってないよ、アイドルくん」




 言い返してから、奏輝先輩は教室を出ていった。