キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴る。

 ドク、ドク、と音を立てる心臓とは対照的に、先輩は顔を上げてあっさり私から離れた。




「じゃ、放課後の練習は忘れないでよ」




 背中を向けて、階段を上がっていく先輩をぼーっと見つめながら、口を押さえる。


 奏輝先輩が、私のこと、好き…?

 そんなそぶり、一度だって…。

 でも、あの目が、声が、うそだとは思えない…。


 ドク、ドク、と鼓動が聞こえる。

 階段を上がって来た先生に注意されるまで、私はその場からうごけずにいた。