「こんなはやい時間から仕事なんだね…」




 閉じそうなまぶたを必死に持ち上げて、あくびを噛み殺しながら玄関に立つ。

 パジャマ姿の私とちがって、唯央(いお)くんはTシャツに七分丈のズボンを着て、キャップをかぶっていた。

 変装のための黒いマスクをあごまで下ろしながら、ニッコリ笑う姿は元気いっぱい。




「うん。見送りありがとう。…ね、行ってらっしゃいのちゅーしてほしいなっ」


「えっ!?」




 びっくりしすぎて目がパッチリ開いた。


 一昨日出会ったばっかりなのに、もうキスしちゃうの!?

 そ、そりゃあパートナーなんだし、いつかはそういうこともするだろうけど…。


 なんて思っていたら、唯央くんは指先で自分のほおをトントンとたたく。


 あ、そっちか…。

 って、私ってばなに考えてたの!?