六年もの間、ずっと呪いのように縛られ続けてきた。
けれど、更に耐え難い現実を突き付けられても、楢崎が傍にいてくれたから乗り越えられたんだと思う。

誰かに寄り掛かることなんて、考えもしなかったから。
羞恥の膿を出し切ることで、一歩踏み出すことができた。

それもこれも全て彼のお陰。

「私一人だったら、乗り越えられなかった。楢崎がずっと傍にいてくれたから、全ては過去のものなんだと思えるようになったの。この先の未来をあの人に左右されるんじゃなくて、ちゃんと自分のために過ごしたいと思えたから」
「じゃあ、隣りの家の男とは何でもないってこと、だよな?」
「……うん。えっ、もしかして、やきもち?……湯川さんに??」
「っ……そうだよっ、五歳のガキに嫉妬するくらいなんだから、見るからにイケメンな奴と楽しそうに話すの見たら嫌でも焼くだろ」
「っっ」

照れを隠すように顔を逸らした彼。
こんな風にあからさまに態度に示して貰えたら、キュン死するよ。

もうこれ以上見て見ぬ振りも、押さえ込むのも難しそう。
何度も気付いては気のせいだと打ち消して来たけれど、もう何も考えずに飛び込んでしまいたい。
取り繕って来た私ではなく、本当の私でも彼は受け入れてくれるだろうか。

「本当の私は……楢崎が思ってるような人間じゃないよ?我が儘だし欲深いし、何より面倒くさいよ」
「そんなこと言ったら、俺だって、優しくないし気は利かないし、相当嫉妬深いよ」
「へ?」
「絶食だった鮎川が普通に笑顔で男と会話してて、すげぇ焦ってるもん」
「っ…」

髪も服も地味で、メイクなんて昼休みに直して以来何もしてないから殆ど崩れてるだろうに。
こんな私でもちゃんと意識してくれるんだ。

「じゃあ、デートしようか」