Side:―――




「ベル公爵令嬢は欠席とのこと…」


「当日はミルワード大公に招待を受けている、か…体よく断られたな。でも、仕方がない。彼女は公爵家の跡取りだ」


「ハリー司祭様?どちらへ?」




肩の下まで伸びた金髪の男は、廊下に出て高い天井の下を歩く。

教会の奥まった場所にある小部屋へ入ると、並んだ水晶玉の1つを持ち上げて、床に投げ落とした。

ガシャンと、水晶玉が割れる音が教会に響く。




「何事だ!?」


「なっ、聖女選出の儀に使う水晶が割れている…!?」


「…申し訳ありません。僕の不注意で落としてしまって」




ハリー司祭は水晶玉の欠片を拾い上げて、にこりと笑った。

神託を受けた証である金色の瞳は聖職者達の間を通り抜けて、どこか遠くを見つめる。




「――……誰1人とて、例外は許さない」