『おやおや芹~、顔赤いよ~。もう、今からそんなんで大丈夫なの?』
「へ、平気だよ。だいたいお姉ちゃんもいるんだから、お家デートにはならないじゃない」
『およ、そういえばそうだね。どうしよう、邪魔にならないよう、あたしはどこかに行っておいた方がいいかな?』
「いいよ、いても。というか今日は紫苑君に、お姉ちゃんのことをちゃんと紹介するつもりだし。いてくれなきゃ困るって」

そう、実は今日紫苑君を家に呼んだのは、お姉ちゃんを紹介するためなの。
本当なら今更紹介する必要なんてないくらい、お姉ちゃんと紫苑君もお互いよく知った仲だったんだけど、お姉ちゃんは幽霊になっちゃってるから……。

お姉ちゃんが亡くなった直後に、紫苑君は引っ越して行って。幽霊になって今も私の側にいることを打ち明けたのが、ついこの前のこと。

紫苑君はそれを信じてくれたけど、彼にはお姉ちゃんの姿は見えないし声も聞こえないから、たぶん実感が薄いと思うんだよね。
だから今日家に呼んで、幽霊になったお姉ちゃんのことを改めて紹介することにしたの。

お姉ちゃんと紫苑君も幼馴染みで仲良かったから、ちゃんとここにいるってことを、ハッキリわかってもらいたいものね。

『芹ってばありがとう。けど、どうするつもりなの? 家に呼んだって、姿が見えないんじゃ今までと変わらないんじゃない?』
「そこはほら、お姉ちゃんが言ったことを私が伝えるとか。私が間に入れば、お姉ちゃんと紫苑君も会話できるでしょ」

ちょっと面倒かもしれないけど、話をすれば紫苑くんも実感が沸くはず。だけど、お姉ちゃんは難しい顔をする。

『でもさあ。それって芹があたしの幽霊がいるって、言い張ってるだけに見えないかなあ? あたしが本当に言ったかどうかなんて、紫苑君には分からないんだし』
「それは……じゃあお姉ちゃんは、何かいい方法はあるの?」
『そうだねえ……要はあたしが幽霊になってここにいるって、ハッキリ分からせられたらいいんだよね?』
「まあそうだけど」
『だったら話は簡単だよ……ボタ~、ちょっとお願いがあるんだけど~』
「ニャ~?」

お姉ちゃんの猫なで声に、丸くなっていたボタが顔を上げる。
あ、お姉ちゃんが何を考えているか、分かった気がする。