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「......?」


ふと目が覚めた、午前5時過ぎ。


自分の部屋のベットの上で、宵華は違和感に首を傾げた。


別に普段より少し早く目が醒めただけの、
いつもとなにも変わりのない朝。


変な夢を見ていた気がするけど、それがどんな夢だったかはさっぱりだ。


しかも、ずーっと生まれてからこれまで過ごしているはずの自室に感じる懐かしさは、寝起きの宵華を混乱させた。


─何故か、長い眠りから漸く目覚められたような感覚。


誰かに目覚めるように言われたような気もするし、
言われていない気もする。


そもそも、この家には宵華を起こす人なんていないから、きっと思い出せない夢のなかで、誰かに起こされる経験をしたのだろう。


色々と不思議に思いながらも、朝日が昇った気配がする外を眺めるため、宵華はベッドから起き上がり、カーテンを開け、窓を開けた。


少し涼しい風が気持ちよく、肺が満たされる。


気持ちのいい朝だ。多少の違和感に目をつぶれば、ぐっすり眠れたらしい身体は調子が良く、いつもより早くに目覚めたのに倦怠感もない。


「…よし」


少し早いけれど、それなら家のことを早めにやってしまおうと気合を入れ、宵華は窓辺から離れる。


机の引き出しにしまってあるスケジュール帳を開いて、日課の予定確認。


(今日は、特に予定はなかったもんね。久々にお父さんと買い物に行こうかな。多分、原稿もひと段落しただろうし)


スケジュール帳の微かな違和感を思い出させる今日の日付を指で何となくなぞり、宵華は頭を振った。


いつまでも悩み続けるのは、良くない癖だ。


違和感は振り払い、現実と向き合う。思い出せない夢を考えていたところで時間の無駄だし、宵華には向いていない。


クローゼットから服を適当に取り出し、着替える。
髪もひとつにまとめ、鏡でチェック。おかしなところがないことを確認して、宵華はまた他のところに違和感を覚えて立ち止まってしまう前に、部屋を出た。


―…後から考えれば、この日が全ての始まりだった。


もしこの日に戻れるのなら、この違和感を見過ごすことなく、自分は辿ることが出来るだろうか。


さすれば、きっと。


─彼を喪うことはなかった。