爽やか王子様が今日も私を口説いてくる。

「美月!」

「へ?ちょ、なに」

「一条くんと知り合いなの!?」

男の子が完全に見当たらなくなった後、いきなりガシッと私の肩を掴み、りりがやけにキラキラした目で見つめてきた。

一条くん?って…

「だれ?それ」

「え、えええ!一条くんのこと知らないの!?」

聞き返した私になぜか心底驚いた顔でうそでしょ!?と叫ぶ。

「学校のアイドル、白石高1の王子様、一条日陽くんだよ!?」

「だれ…」

本気でわからない。アイドル?王子様?
なんの話?

「さっき美月のことを支えてくれた人だよ!」

「ああ、あの綺麗な人?」

へえ、王子様だとは思っていたけれど、本当に王子様って呼ばれているんだ。

「あーもう、ほんとに美月はそういうこと興味ないよね〜。よし、私が詳しく教えてあげる!」

「え、いいってば…」

「遠慮しないの!」

本気で別に聞きたくないのに、聞く耳を持たないりりは、それはもうマシンガントークで"一条日陽"について語り出した。




一条日陽。
苗字になんか聞き覚えがあると思ったら、世界的な大財閥、一条グループの御曹司なんだとか。

あの完璧な容姿と家柄に加えて成績優秀、スポーツ万能で特にバトミントンなんかは全国大会に出たこともあるぐらいの腕前らしい。

そして着飾らない話し方や接しやすさから男女問わず人気者で、特に女子はみんな彼のファン、らしい。

「へえ…」

「まさにハイスペ男子、って感じだよねえ」

りりはうっとりした顔をして、夢見る少女って感じだ。

「りり、好きなの?」

何気なく聞けば、食い気味にそりゃそうでしょ!と言う。

「恋愛的にはタイプと違うけど、鑑賞的にはどタイプだよ」