きっかけは、些細なことだった。

「一条せんぱーい頑張ってください!」

「はーいありがとー」

「きゃあっ!!!」

「先輩こっち向いて〜!」

いつも通り手を振ってくれる女の子たちに手を振りかえすと、黄色い声援が上がる。

隣の赤羽がうげえ…と息を吐いた。

「あいっ変わらずすげえ人数だな…」

「うーんまあ俺だからね」

「おいなんかむかつくなお前」

呆れた様に言う赤羽に、だって本当のことでしょ、と返すとさらに呆れられた。

「お前彼女作んないわけ?」

「うーんまあ今気になる子とかいないし…」

はー、モテるやつは違うねえ、とぼやく赤羽。
いやお前だってモテてるからね?

でも、本当にその時は別に彼女とかはいらないかな、と考えていた。いてもめんどくさくなる奴がたまにいるし、トラブルも何故か起こる。

だったら最初から居なくていい。

「なあはる、今日部活休みだしどっかいかね?」

「おっ、いいねー。じゃあ……あ」

「どした?」