さっきの私と全く同じ返事をした彼は、その後は静かになった。

やがて大きなホテルが見えてきて、先生が立ち上がる。

「もうすぐ宿に着くので近くの人を起こしてください」

「りり、起きて」

「んん、もっと寝る…」

「起きろ」

思わず突っ込んでしまい、それでもりりが起きないので最後はチョップして起こした。



「うわ、広ーい!」

すっかり目が覚めたりりが、部屋を見渡して歓声を上げた。

確かに2人部屋にしては広い。
窓も大きくて、外には海が広がっていた。

「プライベートビーチが近いし、ベランダまであるなんて最高!ね、明日水着着て泳ごうね!」

「はいはい。ほら、ちゃんと荷物整理して」

はーい、と返事をしながら渋々荷物を整理し出したりりは、いきなりパッ、と顔を上げた。

「ねえそう言えばこのホテル、一条君の家が経営してるらしいよ!」

「そうなの?」

少しびっくりした私にりりはふふん、と鼻を鳴らして得意げにする。

「だから一条君におすすめの食事とか聞こうと思って!赤羽君が教えてくれたんだけど、一条君、このホテル何回かきたことあるらしいよ」

「へえ、じゃあこの辺も詳しいのかな」

明日、一条君と赤羽君は穴場スポットとか行くのかな。それはちょっと教えて欲しいかも。

「うん、そう言ってたよ!楽しみだよねー」

「楽しみって?」

なんだか会話が合わない気がして聞き返す。するとりりはあっ、話がね!と付け加えた。

「こ、これで話しかける口実ができたから!楽しみなの!」