「葛西さん」

恋愛的興味はないけど、いつまで経っても聞き慣れない甘いテノールボイス。
振り返れば、キラキラの笑顔で微笑む王子様…もとい一条日陽がいた。

そして彼は、私の親友・篠原美月を狙う男でもある。

「どうしたの?一条くん」

ニコッと微笑めば、彼も穏やかに微笑んだ。

「少し相談したいことがあるんだけど」

「相談?」

何企んでるんだろう、この人。
なんだかいつもと変わらないはずなのに、ワルそうな笑みに見えるんだけど。

彼があまり関わりのない私に絡んでくるなんて、十中八九美月のことでしかない。
ただ、私は断じて美月をこの男にくれてやる気はない。

一条日陽は確かに完璧イケメンボーイだ。
だがしかし。美月のタイプとはかけ離れている。
はいそこ大事。

美月は私にとっての大切な親友。だからこそ、下手な男にくれてやるもんか!