私の通う白石(しらいし)高校は、県内でも偏差値の高い進学校だ。

私は自由度の高い校風、学力でこの学校を選んだ。
仲の良かった友達はみんな地元の高校に行って離れてしまったけれど、この高校にしたことに後悔はない。

そして白石高校と実家の距離が遠かった私は、今現在一人暮らし。

過保護な両親は当初渋っていたけれど、なんとか説得したらちゃんとしたセキュリティのマンションを借りてくれた。

「いいか美月、男はな、みんな猛獣なんだ。絶対に心を許したらダメだぞ!」

「お父さんも男だけど。ていうか何、猛獣って」

「美月ちゃん、何かあったら、いいえ、何かなくても連絡してくるのよ」

「なるべくするようにはする」

「毎日!(だぞ!)」

「…分かった」

そんな感じのやり取りの末、やっと許してもらえたのだ。

それから1年間、私は何事もなく高校生活を送れていた。

何かあるとすれば、友達が少ないことぐらい。
昔から私は、距離を置かれることが多かった。

高校では常に好きな読書をしていたからか、はたまた友人以外の前であまり笑わない性格だからか、すぐに距離ができてしまった。

最も仲がいいのは、幼稚園から一緒の幼馴染兼親友の葛西りり。

高嶺の花(たかねのはな)、なんて言われて遠巻きにされている私に、彼女だけは普通に仲良くしてくれる。

あと高嶺の花って恥ずかしいからやめてほしい。



そんな、狭くとも穏やかな世界で過ごしていた私に変化が起きたのが、いや、起こしたのが一条日陽だった。