教室内は今、ガヤガヤとしていて他クラスの人なんかも多くいる。

なのにそれを気にせず距離を縮めてきた一条日陽。

何考えてるんだ、と思うけど、こいつにとっては造作もないことなんだろう。

でも、やっぱり苦手だ。余裕ばっかあって、こっちのパーソナルスペースを軽々と超えてくるこいつが。

と、急に風が教室内に舞い込んできた。

ぶわっ、とカーテンが広がり、風が静まったタイミングで元に戻ろうとする。
そしてそのタイミングで…

一条日陽は息がかかりそうなくらいの近さで、私の耳元で囁いた。

「好きな子のことなんて、すぐ気づくに決まってるでしょ?」

笑みを含んだ声。

息がかかりそうなくらいだと考えていたけど、微かに、ほんの微かに息がかかった。

慣れない感覚に思わずビクッとしそうになる。