でも、ドキッとしてしまうほど綺麗な笑みでもあった。

彼の大きな手が、スッと伸びてくる。それは迷いなく私の顔へと向かってきていた。

急なことに反応できなかった私の髪を一房、さらりとすくう。

「っ……!?」

思わず目を見開いた私を面白がるように、彼はまた綺麗に笑う。

「これから本気で口説いていくから。覚悟してね」


「っな……!?」

はらり、と彼の手からこぼれた髪が、私の頬を撫でる。

王子様、と呼ばれるこの男…一条日陽に口説かれる日々が始まった、その瞬間だった。