爽やか王子様が今日も私を口説いてくる。

「やっと表情変えてくれた」

こっちが思わず固まっているのに、彼はいつも通りの笑顔を浮かべている。
いや、いつも通りの割に、どこか嬉しそうな感じもする。それがさらに私の困惑を深めた。


いや……落ち着け、私。

「何言ってるの?」

私はふと、冷静になった。
この男は私のことをからかっているんだ、という考えが浮かんだから。

第一、彼みたいな人が私を口説く理由なんてない。私はいたって平凡な女子高生だし、完璧超人の彼が
私を好きになるなんて、天地がひっくり返ってもあり得ない。

そう自分に言い聞かせた私に、彼はまた爆弾をぶっ込んできた。

「その言葉通り、篠原さんに意識されたいんだよ。僕、好きな人にはストレートに言いたいからね」



………………………………は?



一瞬、私と彼の周りだけ、時が止まった気がした。





教室は相変わらず騒がしくて、教壇では先生が話してるのに。

なぜか、聞こえない。

好きな人。
こいつは今、そう言った。
だれが?だれを?




…………私を?




ぶわっ、と頬が熱を帯びたような気がした。

頭の中がスプーンでかき混ぜられたみたいに、ごちゃ混ぜになる。

やだ、まって。私の顔、いま絶対大変なことになってる。見られたくない。

急いで彼から顔を背け、俯いた。