爽やか王子様が今日も私を口説いてくる。

そして会話を続けてしまうと、彼は絶対に言い出すのだ。

「さっきも言ったけど、篠原さんのポニーテールかわいいね」

“かわいい”

言われ慣れない私にこの男は、ことあるごとに言ってくる。

「ありがとう」

そう?うれしい!なんてノリのいいことなんてできる私ではない。だから無難に礼を言う。

いつもはこれで会話が終了する。なのに、なぜか今日は違った。

「本当に可愛いって思ってるのに」

にこっ、と綺麗に笑いながら頬杖をして、私を見てきた一条日陽。

クラスの女子たちがイケボ、なんで騒ぐ声がいつもよりちょっと低くて、まるでナンパ、というより口説かれてるみたい。

なんだかいつもと雰囲気が違う。
キラキラしてるのは同じなのに、どこか危険な…獰猛な獣のような目をしてる気さえしてくる。

「…あんまり、女の子に可愛いなんて言うと一条くんだったら期待されちゃうよ」

こんな甘いマスクでかわいい、なんて言われたら大抵の女子は落ちると思った。

本人に悪気がなくてもこれはダメだ。

そんな想いを込めて、苦笑いをして返す。

しかし彼はそんな私に対し、きょとん、とした顔で言うのだ。

「え、篠原さんにしか言わないから大丈夫だよ。ていうか、期待して」




「……………は?」




思わず、素の声が出てしまった。

こいつは、何を言ってるの?