「院田、隣いい?」

昼時、食堂できつねうどんを食べていると声をかけてきたのは同期の今谷だ。
彼の手には大盛カツカレーののったトレー。お昼からそんなに食べたら眠くなりそうで、私は一度もこの社食の大盛に挑戦していない。なおサンエア株式会社の社員の多くはこの自社の食堂を利用する。東京郊外にあり、駅前には食事するところもあるが、会社近辺にはコンビニが一軒しかない。
周囲は中高一貫の私立校と大きな公園、住宅地といったところだ。田畑はたくさんある。

「珍しいね、社内で食べてるの」

営業職の今谷は外勤が多く、社外で昼食を取っているイメージだ。

「今日は午後から会議に参加なんだよ。結構大きなプロジェクトに入れられちゃって」
「名誉じゃない」
「名誉じゃないよ。俺、仕事よりプライベートを大事にしたい方だから」

ふうんと相槌だけ打っておく。私とは気が合わないなと思いつつ、そもそもどこからどう見ても陽キャの今谷と、どこからどう見ても陰キャの私なので、合わなくても当然だなと思い直す。
同期は五人いるけれど、私と今谷以外は他の営業所や研究所に配属されている。だから、今谷が私に話しかけてくるのはわかるのだけれど。