桜には少し早い三月初旬、結婚式は予定通り身内だけで行われた。ホテル周辺はコブシの花が満開でミモザが咲き始めている。鳥の声が高く、空は真っ青。いい日だ。

ホテルのエントランスには、父の大きな生け込みがある。この日のために、父がホテル側に頼んで生けさせてもらったそうだ。
会場の装花は白とピンクを基調に愛らしくまとめてもらい、私のブーケは薄いピンクのチューリップにした。長い黒髪は洋装にも和装にも合うようにまとめてもらった。目元もコンタクトだ。
ウエディングドレスはオフショルダーのエンパイアライン。シンプルなものがいいと思っていたのと、成輔の反応が一番よかったものにした。

「成輔、今日は頑張ろうね」

新婦控室で準備万端の私は、のぞきに来ていた成輔に本日の意気込みを見せる。

「いい式にするよ」

成輔は肩を震わせて笑っている。

「綺麗だねって言いに来たんだけど、まさかそんなやる気満々のきみがいるとは」

確かに日頃、興味のあること以外は頑張らない私だけれど、今日は門出の日だ。
親族だけの式だからこそ、みんなの記憶に残るいい結婚式にしたい。