日が暮れかけていることに気付き、私はそそくさと踵を返した。
透流さんを待たせてしまったらまた母がぎゃーぎゃーとうるさい。
歯切れが悪いさようならになってしまうが、どうせまた明日顔を合わせる。
そう考えていた矢先、肩に重みがかかった。
それが沢里の手だと認識した瞬間にぐるんと勢いよく体を振り向かせられる。
ポニーテールが視界の端で弧を描く。そして目に前には沢里の、顔。
「ひえっ!」
「リンカ――五十嵐凛夏。確かに俺はお前のこと全然知らない。お前の中の【linK】しか見てなかった。そうだよな……それじゃあ違うよな。でも俺はお前を諦めない。【linK】かどうかは関係なく、まずは……友達からお願いします!!」
「と、ともだち?」
傍から見れば勘違いされそうな、とんでもない台詞を真正面から受け止める。無茶苦茶だ。そして強引だ。
けれどもしかしたら私は、無意識のうちにこの言葉を待っていたのかもしれない。
柾輝くんは【linK】も凛夏もどっちも私だと言った。その意味はまだ分からないままだけれど。
遠くで波音が鳴る。気付いた時にはもう、私は黙って頷いていた。