sawaさんに教えてもらった、お互いに向かい合って呼吸を合わせて歌う方法を続けると、徐々に歌える時間が伸びていくのが分かった。

 Aメロからサビ、サビからBメロへ。

 呼吸が続くことがこんなに嬉しいと思ったことはない。

 時折調子が悪くなることもあるが、その頻度も減っている。

 最初は遠慮がちだった沢里ももうなりふり構わず歌に集中するようになった。

 そうやっているとまるで二人で舞台に立っているようだ。

 沢里と歌う時はそんなイメージをするようにしている。

 大勢の観客の前で沢里と一緒にステージに立つ。

 沢里はギター、私はキーボードを弾きながら歌う。

 そんな想像をしていると、少しずつ嫌な妄想から逃れられることに気が付いた。

 私を責め立てる声が、想像の中の歓声でかき消される。

 冷たく刺さる視線は、熱狂的な視線へと変わる。