ただ時間に身を任せているだけで週末がやってきた。
私の息もれを治すために、沢里のお父さんがわざわざ時間を作ってくれる。
その贅沢さに眩暈を覚えつつも、これで少しでも息もれが治るならば!
と気合を入れて沢里との待ち合わせ場所へと向かう。
今朝焼いたばかりのアップルパイを手土産に、失礼のないようにしなければ。
家から二駅分電車に乗って、駅前のモニュメントのそばに立つ。
沢里がうちに来た時は自転車を使っていたが、私にはその距離を漕ぎ続ける自信がない。
思えば沢里は、私が泣いたあの夜、その距離を駆けつけてくれたのだ。
「リンカー」
一人むず痒さを感じていると後ろから沢里の声が聞こえてきた。
振り向くと私服姿の沢里が手を振っている。
「立っているだけで目立つな!」 私は心の中でそう突っ込まざるを得なかった。
駅前で人目が多いこともあり、道行く人々が沢里をチラ見している。
学校でも長身爽やかで人気者、外に出ても注目の的。
私は居心地の悪さを感じつつそんな沢里と三歩ほど離れた場所で呼びかけに応えた。
「いやー待たせてご」
「早く行こう今すぐ行こう」
へらりと笑う沢里を目で黙らせ早口で促す。