断罪イベントもおわり、あとは退場するだけ。
 ふと、努力してきた日々を思いだす。

 私は……ゲームの中でも、この世界でもカロール殿下が好きだった。殿下がリリーナを好きになっていなかったら、彼の隣に立ち、この国とあなたを守りたいと思っていた。

 今となって、それは叶わぬ夢。
 彼を思う、私の気持ちも消えた。

 これで最後か。カロール殿下にお会いすることもない。
 最後だし、すべてを吐きだしてもいいわよね。

「カロール殿下、最後に一言よろしいでしょうか?」

「ひとこと? いいだろう、リリーナへの謝罪しかと述べよ!」

「……残念ながら謝罪ではありません。私、ルーチェ・ロジエはカロール殿下のことをお慕いしておりました。これからは愛するリリーナさんと、末永くお幸せになってくださいませ」

 そう伝えて、二人に深く頭を下げた。
 これで、思い残すことはもうない。

 踵を返して会場をでて行こうとする、私の背に――"バキッ、バギッ"と何かにヒビが入る音が響いた。そしてーー壇上に立つカロール殿下がいきなり『グワァ!』と叫び、壇上に両膝を突き頭を抱えて苦しみはじめた。

「カロール様、どうしたの?」

「「カロール殿下?」」

 あわてて壇上の親衛隊とリリーナは彼を支え、警備をしていた城の騎士たちも壇上に駆け寄る。

「誰か! はやく、ここに医者を呼べ!」

 医師を呼ぶ声、殿下を呼ぶリリーナの声、慌ただしくなる舞踏会の会場。私の横を壇上へと走る騎士。

 その様子を。息を飲み、静かに壇上をみつめる貴族たち。

(いったい、なにが起きているの?)