はやる気持ちを抑え、騎士が開けた扉からエスコートなく会場に入場した。あつまる貴族たちの、いやな視線の中を進み中央に、私は断罪の場に立った。

 すでに壇上で私を待っていたカロール殿下は、到着した私を睨みつる。その傍らにはこのゲームのヒロイン、リリーナさんがいた。

「よくきたな公爵令嬢ルーチェ・ロジエ嬢。魔力なしの君と婚約破棄をする。俺は魔力もちで可愛いく、優しい、男爵令嬢リリーナを心から愛してしまった」

「ごめんなさい、ルーチェ様。私もカロール様を愛してしまったの」

「魔力なしの分際で! よくも、いままでリリーナちゃんを苦しめやがって!」

「「そうだ、そうだ!」」

 壇上で寄り添う酔狂な二人と、彼女の騎士になったつもりの『リリーナ親衛隊』はこの場でも、乙女ゲームとは違い魔力なしの私を見下し、大袈裟(おおげさ)に声を上げた。

「リリーナさんをいじめた悪女め!」
「いままで、おこなったことへの謝罪しろ!」
「リリーナちゃんにあやまれ!」

 彼らは私のことをリリーナをいじめる悪女だという。じっさい彼女と面と向かって会話をしたこともなければ、いじめたことすらない。

 しいていえばあなた達、新鋭隊の方が残酷だった。
 
 身に覚えのない難癖をつけられ、階段から突き落とされたあのとき"先輩"が守ってくれなかったら、大怪我をしていただろう。

 それらすべて終わったこと、つまらない断罪イベントは即座に終わらせましょう。

「カロール殿下、婚約破棄を承諾いたしました。国王陛下、王妃へのご報告、婚約破棄の書類などはすべて、カロール殿下とリリーナさんにお任せいたします」

「……わかった、父上には俺から伝える。ルーチェ嬢との婚約破棄がすみしだい。ルーチェ嬢がおこなってきた罪への罰を伝える」

(この場で国外追放は言い渡されないのか……)