三大珍味の食材と引き換えに松井カヤの転校を承諾します】
そんな短い文章の下に、今日の日付とお母さんのサインと印鑑が押されている。
うそ……!!
たしかに朝食に三大珍味が使われるほど、うちの家庭は裕福ではない。
だからって……。
「食材と娘を引き換えにするか普通!?」

信じられない。
【ツインズ】もかなりの変人だと思っていたけれど、それを上回る変人が我が家にいたなんて……。
クッと涙を押し殺し、契約書を晴へと返す。

「あたしは売られたのね」
「あぁ、そうだ」
「あたしは三大珍味に負けたのね」

「まぁ、カヤと三大珍味を天秤にかけたらそうなるだろうな」
「どういう意味よ!!」
涙をこらえながら晴に言い返す。

「けど、大丈夫だ」
ふいに晴があたしの顎を指先でクイッと持ち上げた。
まるでキスするような体勢で、心臓がドキンッ!とはねる。

「カヤ、お前は俺が見染めた相手だ。A組のやつらにも負けないものを持っているハズだ」
「な、な、なななにを言って……!?」

あんなキラキラした人種とあたしがはりあえるワケがない!
ドキドキしていると、晴はジロジロとあたしの顔を見つめてそしてボソッと呟いた。
「たぶんな」
……。
たぶんってなんだぁぁぁー!!!