スーハースーハー。
あたしは深呼吸を繰り返す。
危うく地上で溺れ死ぬところだった。

「これで近い将来我が家も大富豪の仲間入りだな」
お父さんが涙ぐみながらそう言う。
「そうよあなた。万年サラリーマンで頑張って来た甲斐があったわね」

と、お母さん。
いや、お父さんの努力で大富豪になるワケじゃないし。
そもそも【ツインズ】のどちらかと付き合うなんて決めてないし。

そう思って呆れてみんなを見ていると、不意にユズちゃんが真剣な表情になった。
どうしたのかな?
と、思っているとみるみるうちに鬼のような真っ赤な顔になり、あたしに歩みよる。

「な、なにか用事でしょうか……?」
「まさかカヤ、あんたまだハジメとかいう男と付き合っているんじゃないでしょうね?」

ユズちゃんにそう言われ、あたしは一瞬キョトンとしてしまう。
あ、そうか。
あたしにはハジメがいるんだった。