「カヤ、気持ち悪い顔してどうしたの?」
朝ご飯を食べていても自然と顔がにやけていたようで、ユズちゃんにそんな事を言われてしまった。
「今日はハジメとデートなの」

そう返事をすると、家族全員が箸を持つ手を止めた。
そしてシンと静まり返る食卓。
「……どうしたの?」
そう言うと、やっとお母さんが口を開いた。

「あぁ、ハジメ君ってあのハジメ君? まだ別れていなかったの?」
「あ、カヤって彼氏いたんだっけ? もう必要ないんじゃない?」
「どこの馬の骨かわからん男、お父さんは許さないぞ!!」

みんなやっぱり、ハジメの存在を忘れていたようだ。
「もう、うるさいなぁ。あたしにはハジメしかいないの!」
「そんなこと言って視野を狭くしていると、沢山のものを失うぞ!!」

「そうよ、お父さんの言う通りよ」
「あたし芸能人希望だからね?」

3人はまた好き勝手言い始めて、あたしはさっさとキャビア乗せご飯を平らげた。
っていうか、まだ平野家からごちそうを頂いているのね。
「じゃぁ、行ってきまぁす」
あたしは3人の声をから逃れるようにバックを掴み、家を出たのだった。