お隣のヤクザに要注意Ⅱ

「叶恋……」

「……恋しくなっただけ。ふたりのこと」

「……帰るか」

シュウさんに手を引かれ工場に背を向けた。

どう向き合えばいいんだろう。

お母さんとお父さんのこと、少しずつ冷静に整理しようとしてもできなくて。

それにしても……だいぶ神楽組から逃げたのかな。

こんな人気のない廃工場に身を潜めるってことはそういう事だよね。

当時6歳の私を守りながら逃げてたふたり。

全然現実味がないけど、全部本当の話で。

そしてまだ、何も終わってなくて。

なにも出来ないのが本当にもどかしい。

今はただ……羅虎と葉山さんの帰りを待つだけ。

「……どうして私、殺されなかったのかな」

それだけが私の心に根強く残った。