辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

「それじゃ通じないですよ。エル、料理そのものは騎士団員が交代でするから、君はこの樽から指示だけ出してくれますか? 君が実際に包丁を握ったり、炒めたりするのは危ないから」
「危なくない!」

 と、口を尖らせたけれど、メルリノの言うこともわかるような気がした。

 たしかにエルの手は小さいし、一人で料理するのは危険だ。フライパンと包丁の精霊が、エルに力を貸してくれたとしても。

「エル、お料理、できる?」
「エルがしたいならね」

 メルリノの手が、そっとエルの髪に触れた。ロドリゴにぐちゃぐちゃにされてしまうのは困るけれど、メルリノの手は優しい。

 頭を撫でられるのが、こんなに気持ちのいいものだなんて、考えたこともなかった。

「する。お料理、するよ」

 ここで暮らすのならば、お手伝いぐらいはするべきだ。