辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

 五歳だと言い張る割に、小さかった身体、回らない舌のことを考えると、胸のあたりが熱くなるような気がした。

 ただ、誘拐されたことだけではない。エルは、長い間ろくな扱いを受けていなかったようだ。

 味覚を失ってもおかしくはない。いや、命を失ってもおかしくはない状況だったのだ。

「しばらくの間は好きにさせておく。それで、問題ないだろう」
「承知しました。していいことと悪いことは、ある程度わかっているようですからね。私も目を光らせておきます」
「頼んだ」

 ジャンは頼りにして大丈夫だ。

 どうか、少しでもエルにとっていい方向に進みますように。

 そう願わずにはいられなかった。

 

 * * * 



 厨房に入る許可をもらうことができた。それはそれでいいのだが、さて、調理台が遠い。

「この樽使っていいって、父上が言ってたぞ。包丁は危ないから、俺に任せろ」