辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

 物心ついてから、エルの部屋にはおもちゃはなかったし、こんなにふわふわで手触りのいい品も置かれていなかった。

 辺境伯家の人達は、エルを本当に可愛がってくれているらしい。

 いつまでここにいられるのだろうという不安は、心の中に封じておく。きっと、ロドリゴは悪いようにはしないから。

「裁縫部の人、夕方には完成させてくれるってさ!」

 ばたばたと戻ってきたハロンが、満面の笑みで叫ぶ。ハロンのために残されていたのは、黒い毛皮だったそうだ。

「ありがとう、はろんしゃま」
「んー、その呼び方はやだなあ。うちの子になるんだろ」

 ハロンは首を横に振ったけれど、まだ正式にそうなったわけではない。

「はろんおにいしゃん? 」

 噛んだ。お兄さんすらまともに言えないなんて。

「らーしゅおにいしゃん、めりゅりのおにいしゃん」