辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

「あー、兄さん達ずるい! 俺だって、エルにぬいぐるみやりたかった!」

 思いがけないところで地団太を踏み始めたのはハロンである。今日は、エルのお世話係担当だったから、ぬいぐるみを頼みに行く余裕はなかったようだ。

「だと思って、お前の分も毛皮は用意しておいたぞ。頼むなら、工房に行ってこい」
「本当に?」
「もちろん」

 ラースの言葉に、ハロンは飛び上がって喜んだ。

「やった! さすがラス兄さん」
「頼んだのはメルリノな」
「メル兄さん、ありがとう!」

 ぴょんとラースとメルリノに飛びついてお礼を言ったハロンは、食べ終えた食器の残ったトレイを放置して、ばたばたと出て行ってしまった。

「こーぼう?」

 エルは、首をかしげた。工房って、なんだ。

「あー、エルは知らないかもしれませんね。うちの騎士団、自前の工房を持っているんです」