病人食だからと言って、味がないにもほどがある。舌に触れるのは、食感だけ。甘いのかしょっぱいのか、何一つわからないのは薄味にしすぎだと思う。出汁も使われていないし。

 それもまあしかたないのかもしれない――だって、騎士団員が順番に料理当番を務めていると聞いた。今エルに付き添ってくれているメイドは城下町からの通いだそうで、騎士団の厨房にまでは入ることは少ないらしい。

「食欲ない? いっぱい食べないと大きくなれないぞ」

 困ったような顔をして、ハロンが首をかしげるから、エルも困ってしまった。おいしくないと言うのは失礼だ。でも、おいしくないものはおいしくない。

「む」

 ハロンをこれ以上困らせるのも申し訳なくて、大きく口を開ける。開いた口の中に差し込まれたスプーン。流し込まれたスープをごくりと飲み干す。

「ぱん、ほちい」
「はーい。パンな。どうぞ」