辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

「エスパテーラ伯爵、前に出ろ」

 もう忘れたと思っていた名前。その名前が出てきただけで、エルの胸がぎゅっとなった。

 大丈夫、大丈夫。心の中でそう繰り返す。

 エルの周囲には、最強の家族がいるのだから大丈夫。

 改めて見たエスパテーラ伯爵は、背の高い男性だった。鍛えてはいないようで、ひょろりとしている。顔は険しく、視線も鋭い。

 エルにちらりと向けた視線には、親の愛情なんてものはまるで感じられなかった。

「そこにいる娘は、そなたの娘だというのは本当か」
「はい、陛下」

 かつて父と呼びたかった人――エルは父と呼ぶことを許されなかったから――は、国王の前で膝をつき、頭を下げた。

 血の繋がりがあることは、なんとなく理解した。エルと同じ髪の色、同じ色の瞳をしている。顔立ちが似ているかどうかはよくわからなかった。でも、まったく親しみは感じない。