辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

 もう、家名を思い出すこともできない。一度たりとも、エルを家族とは認めてくれなかった人達。

「……あ」

 じっと見ていたので、視線を感じたのかもしれない。女の子と真正面から視線が交錯する。エルは慌てて下に目を向けた。

(嫌な予感がするの)

 そして、その嫌な予感は次の瞬間的中した。

「エルレイン……?」

 すれ違った男性が、思わずと言った様子で口にした。『エルレイン』と、名前を呼ばれた瞬間、頭の中に、生まれてからのことが次から次へと流れ込んできた。

 母とのわずかな思い出。母が亡くなった直後現れた新しい母と妹。

 家族からはじき出されたような気がして不安だった日々――そして、エルの周囲で不可思議な現象が起き、『呪われた子』と呼ばれたこと。

「あ……あぁ……」

 子供のものと思えない、しわがれた声がエルの口から漏れた。