辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

 エルは鼻をひくひくとさせた。溶けたバターの香りは、幸せの香りだ。おいしいものができるだろうとそわそわしてしまう。

 隣でラースも鼻をひくひくとさせている。こうしてみると、十七という年齢より、少し幼く見える。

 生地を流し入れたら、蓋をして、あとはジェナにお任せだ。弱火でじっくりじっくり火を通す。表面が乾いてきたら、ひっくり返して両面焼く。これもジェナの合図で完璧だ。

 甘い香りが漂ってきて、二人そろってまた鼻をひくひくさせる。味見と称して、一切れ先に切ってしまおうか。

「なあ。一個じゃ足りない気がするんだ。絶対父上も母上も欲しがるぞ」
「……作っちゃう?」
「作っちゃおう」

 エルとラースは、顔を見合わせてにやり。パウンドケーキはそんなに難しいお菓子ではない。手を貸してくれる人さえいれば、いくつでも焼けるのだ。

「二個でも足りないかもな。三つ、いや、四ついっとくか?」