辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

「ええ、だって。私、あなたに一目ぼれしちゃったんだもの。私の可愛い娘がいるって……どうかしら、私の娘になるのは嫌かしら?」
「……でも」

 エルはためらった。
エルはなんとか伯爵家の娘である――たぶん。たぶんというのは、暗い部屋に押し込められていた期間があまりにも長かったからだ。エルとしての人生の半分近く、エルの世界は狭い部屋に限られていた。

「エルの本当のお父さんとお母さんが見つかったら?」

 辺境伯家に拾われていた当初見ていた夢では、生みの母はもう亡くなったようだった。だが、父はまだ確実に生きている。
 エルが辺境伯家で暮らしていることで、何か問題が起きたりしないだろうか。

「……渡さないわ。私とロドリゴはあなたを愛しているの。あなたが本当の娘になってくれたら、私達は嬉しい。どんな人が来たって渡さないわ。たとえ国王陛下が相手でもね」