辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

「兄上、この地には今新しい風が吹いているんですよ」

 部屋で一人、甘味と酒をたしなむジャンの前には、グラスが二つ。一つは兄に捧げるためのもの。待機ではない夜は、こうして静かに過ごすのが好きだ。

 ラースとメルリノが拾ってきた少女は、最初のうちは無表情だった。少しずつ笑みが増えて、『おいしい』を口にするようになって。

 どこで覚えたのか、はたまた料理の天才なのか。彼女の作る料理は全部おいしい。

 メルリノが言うには、精霊の力を物体に宿すことのできる稀有な能力の持ち主でもあるそうだ。フライパンと包丁が、常にエルには付き従っている。

 使い方によっては、剣に炎の精霊を宿したり、風の精霊を宿したり、と攻撃力の増加に使えるはず。だが、彼女が精霊を宿したのはよりによって調理道具であった。

(……たしかに、おいしいのですけれど、ね)